ギリシャとローマの神話 は、私たちの言語学習にとってまさに宝の山。その奥深さと魅力にどっぷり浸ってみませんか?
神話には神々や勇敢な英雄、不思議な冒険が登場します。しかし、なぜこれらの神話が英語学習にとって大切なのでしょうか。一緒に、神話の魔法を少し読み解いてみましょう!
ギリシャとローマ神話とは
ギリシャ神話
古代ギリシャの神話は、神々や英雄、驚異的な冒険が登場する魅力的な物語で溢れています。ゼウスやヘラ、アポロ、アテナなど、個性豊かな神々が登場し、彼らの物語は古代ギリシャの価値観や信念を伝える重要な手段でした。また、有名な英雄の冒険譚も多く、その中には「オデュッセウスの冒険」や「ヘラクレスの12の試練」などがあります。
ローマ神話
古代ローマの神話は、ギリシャ神話に影響を受けつつも、独自の要素を持っています。ローマ神話にはローマの神々や英雄が登場し、ローマ文化や帝国の形成に大きな影響を与えました。
古代の人々が世界や人生の不思議さを探求し、自分たちの考えや冒険を楽しむために使われました。さらに、これらの神話は後の文学や文化にも多大な影響を与え、私たちの言葉や物語に深く根付いています。
神話の文化的・社会的側面
フランスの哲学者、文学者、そして文化評論家である Roland Barthes は彼の著書「Mythodologies」で、神話は、まるで社会や時代の鏡のようで、その中にはその社会や時代の考え方や仕組みが映し出されている、と主張しました。
Image by macrovector on Freepikギリシャ神話の場合
古代ギリシャの神話に出てくる神々や英雄たちは、古代ギリシャ人が大切にしたり尊敬したりした価値観や美徳を象徴しています。勇気や知恵、美、そして探求心などが、古代ギリシャ社会で高く評価されていたものでした。たとえば、アキレスは勇気の象徴として、アテナは知識と戦略の象徴として表現されており、古代ギリシャ社会がどのようなものであったか、どのような価値観を持っていたかを伝える手段として使われています。
ローマ神話の場合
同様に、古代ローマの神話もローマ文化や価値観を反映しています。ローマの神話では、勇気、法律、規律が非常に重要視され、これらはローマ帝国の統治と社会の基盤として機能しました。
神話は当時の文化や社会の価値観や信念を、物語やキャラクターを通じて伝える手段でした。これによって、異なる文化や時代を理解し、その背後にある思想や構造を探る手助けになります。
英雄の旅
まず、物語と冒険の研究者で、神話学や比較宗教学の分野で有名なJoseph Campbell (以降 ジョセフ・キャンベル)のインタビュー動画を埋め込みました。彼が冒頭で述べた点がとても印象的だったので引用します。
このインタビューの始まりでは”The Hero’s Adventure”「英雄の旅」を主題として、彼はインタビュアーの質問に対してこう答えています。(動画は5:47から開始します。)
インタビュアー:
“Why are there so many stories of the hero or of heroes in mythology?”
(なぜ神話では多くの英雄の話が登場するのですか。)
ジョセフ・キャンベル:
“Because that’s what’s worth writing about.”
(それは書くに値することだからです。)
“I mean, even in popular novel writing, you see the main character is a hero of a heroine that is to say someone who has found or achieved or done something beyond the normal range of achievement and experience.”
(人気小説においても、主人公はしばしば日常を超越した行動を取り、何かを見つけたり、達成したり、成し遂げたりするヒーローやヒロインとして描かれていることがあります。)
“A hero properly is someone who has given his life to something bigger than himself or other than himself.”
(ヒーローとは、自分自身や他人よりも大きな何かに自分の生涯を捧げた人のことを指します。)
世界中の物語や神話に共通して現れる物語の構造や要素のうちで重要な、「英雄の旅」の部分に彼は注目したことで有名です。神話学というと難しいかもしれませんが、中学の英語の授業や読書の中で出てくることがあります。身近な物語で具体例を出すとすれば、ハリー・ポッターシリーズや「アラジン」の物語にもこの要素が含まれていると言えるでしょう。
英語の文学における英雄主義
ジョセフ・キャンベルは、神話におけるheroism(英雄主義)の表現が多いことを指摘しています。彼は、英語圏の文学作品には、ギリシャ神話の英雄たちから学んだ英雄主義が取り入れられており、多くの物語が英雄の旅路を描いていることに注目しています。
例えば、ギリシャ神話の「オデュッセウス」の冒険は、ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」や、他の英語圏の冒険物語に影響を与えています。
物語紹介コーナーでも取り上げた アーサー王伝説 は、中世ヨーロッパにおける有名な冒険物語の一つで、アーサー王や円卓の騎士たちの冒険が描かれており、魔法、騎士道、冒険がテーマとなっています。決定的な証拠はありませんが、オデュッセウスのような英雄的な冒険は、この伝説に影響を与えた可能性は否定できないのではないでしょうか。
他には有名な冒険物語で、「ホビットの冒険」や「ナルニア国物語」などで英雄主義の要素が見ることができます。
神話の力・神話から派生した英単語
そしてジョセフ・キャンベルは彼の著書「The Power of Myth」で、言語が神話理解のツールであると述べています。神話は言葉を通じて伝えられ、言語の力を通じて神話の奥深い意味を理解できます。
具体例を出すとすれば、ギリシャ神話の「Nemesis」(運命の女神)から派生した「nemesis」という英単語は、報いや運命に、敵わない敵に対する不可避な力を表す言葉*として使われています。私がよく遊ぶバトロワゲームのApex Legendsに、登場する武器の名前にもネメシスはありますね。一時期ぶっ壊れ武器だったのでイライラした覚えがあります(爆笑)
〈文〉歯が立たない[かなわない]敵*
引用元:英辞郎on the web
他に有名なものだと、ギリシャ神話の英雄「アキレス」から派生した「Achilles’ heel」もあります。日本語でもアキレス腱と言いますよね。神話では、アキレスはかかと以外が無敵とされており、「Achilles’ heel」は、弱点や脆弱な部分を指す表現として使われます。
英語の文学の世界観と表現方法への影響
英語の文学の世界観への影響
Robert von Ranke Graves は「The Greek Myths」で、ギリシャ神話のキャラクターやストーリーが英語圏の文学に広く登場し、作家たちにインスパイアを与えたことを指摘しました。古代神話は英語圏の作家たちに無限のアイディアと物語を提供し、文学の世界を豊かにしました。
例えば、Shakespeare の喜劇「A Midsummer Night’s Dream」は、ギリシャ神話の影響を受けた作品で、妖精や神話的な要素が織り交ぜられています。
英語の文学の表現方法への影響
少し難しいですが、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ティトゥス・アンドロニカス」では、ギリシャ神話の詩的な要素と英語の詩的な伝統が融合した美しい比喩が見られます。
“O, why should wrath be mute, and fury dumb? I am no baby, I, that with base prayers I should repent the evils I have done.”
直訳(おお、なぜ怒りは黙って、激情は鎮められるべきなのか? 私は赤子ではない、卑しい祈りで私が犯した悪事を悔い改めるべきではない。)
意訳(なぜ怒りを抑え、激しい怒りを押し殺すべきなのか? 私は幼子ではなく、自分が犯した悪事を許し、謝罪するために卑しい祈りを捧げる必要はない。)
この一節では、キャラクターが怒りと憤りを表現するために比喩的な言葉を使用しています。”wrath”(怒り)や”fury”(激怒)などの強い感情を、”mute”(黙っている)や”dumb”(口のきけない)などの詩的な言葉で表現しています。このような比喩的な表現は、英語圏の文学においてよく見られる詩的な手法であり、ギリシャ神話の物語やキャラクターと組み合わさって、言葉の響きや効果を高める役割を果たしています。
英語圏の文学作品においては、感情やイメージを効果的に表現するためにこのような比喩やメタファーが頻繁に使用されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。これらの神話は古代の物語や神話で、神々や英雄、驚異的な冒険が中心となる物語です。神話は文化や社会の鏡として捉えられ、特定の価値観や構造を反映し、英雄たちの冒険譚は英語圏の文学に多大な影響を与えました。英雄主義や神話から派生した英単語は英語のスキルアップに役立ち、神話は英語の文学の世界観や表現方法に深い影響を与えています。
ギリシャとローマの神話を学ぶことは、英語スキルアップだけでなく、文学や文化の理解を深める手助けとなります。
今後も、神話の物語を紹介していきます。ぜひチェックしてみてください!
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